テーマ「演劇が必要なくなる!?本当にそう思う?」/「どうして自分たちが表現しているのか?」
島原「そもそもの話をすると演劇がなくなるって今に始まった事じゃないと
思うんですよ。教育カリキュラムに他の芸術は入っているのに、演劇
は入ってないじゃないですか。音楽・美術の母体に比べて演劇の母体
は圧倒的に小さいと思うんですよ。」
中川「大きい母体としては残ってないですね。」
島原「音楽・美術は触れる機会多いですけど、演劇は小さい頃から触れる環
境ってないですよね。学校教育がそうだから芸術の中では圧倒的マイ
ナーなジャンルだし、いらないとなると無くなるのは一般的に演劇だ
と思います。」
中川「学校教育に演劇が入ってないのは発展的だったからだと思います。」
島原「海外では演劇の授業があるけど日本は国語に付随して、とか芸術鑑賞
として、じゃないですか。」
中川「平和学習の時に『感じた事をお芝居にしろ』って先生に言われて初め
て脚本を書いたのでお芝居を披露する機会はありましたね。音楽授業
は誰がどういう思いで作ったか分からないものをとりあえずリコーダ
ーで吹いたりしますから(笑)」
島原「中川さんの先生の生徒に脚本を任せるっていう判断がすごいですね。
大概の先生は自分で脚本を書いて演出する事が多いですもんね。」
松原「幼稚園では劇があったけど小学校は無かったなぁ。中高でいきなり文
化祭でするよね。」
島原「そうそう!それがダメやと思いますね。演劇を習ってないし、演劇の
起こりとか何も知らないのに、いきなり文化祭でするとか分からない
んですよね。」
中川「朗読会とか無かったですか?」
島原「あったけど、面白いとは思わなかったですね。中川さんが演劇を始め
た理由は、小学校で本を書いた時ですか?」
中川「それが違うんですよ。中学の時に姉と一緒に演劇のDVDを見てて、エ
ンドロールに、僕の名前が入ってないんですよ。当たり前なんですけ
ど(笑)。ゲームでも「AND YOU」って出るのに。エンドロールに
自分の名前が載るように頑張ろうって思いましたね。それから、大学
の時に手っ取り早く演劇部で偉くなろうって思って、松原の代の…」
島原「え?先輩??」
松原「そうですよ。」
中川「そうなんですよ!松原の代の新歓公演が死ぬほど面白くなくて、ここ
なら偉くなれるって思って。入りましたね。」
島原「死ぬほど面白くない(笑)」
松原「その公演の主演、俺やってんけどなぁ(笑)」
中川「入ったのはいいけど、やっぱり思い通りにはいかなくて、最初のころ
は思い通りにいかない事も気づかないんですね。最初は皆に好かれた
かったので王道ファンタジーのような作品をしましたけどその公演を
終えたらもう二度と歌ったり踊ったりはしないって思いましたね。」
松原「まぁ、その公演でも主役やったんですけどね。(笑)」
島原「(笑)でも一回やってみないと分からないんですよね。」
中川「僕の表現したい事が伝えれなかったんですよ。自分の強みは何だろう
って考えて、僕、人一倍、後悔してきたので、後悔を武器に公演する
しかないって思いましたね。自分自身の事をお芝居にして、脚本を書
いてると世間への怒りとかが明確になってきましたね。後悔を先に立
たせてお芝居をしてるのは、贖罪の意味もあると思いますし、後悔し
た人には、一緒に立ち上がろうって思うので暗いだけのエンディング
は書かないようにしてますね。」
松原「そういう向き合い方してたら演劇がなくなる事はないんじゃない
の。」
島原「ただ色んなコンテンツが増えすぎて自分を表現する事が団体ではなく
個人に変わってきてますよね。団体で何かするのは推奨派ですけど、
昔に比べたら劇団も少人数になってますし、カフェ公演が多くなって
自分たちだけで出来るものが出来たらいいっていうのは好きじゃない
ですね。」
中川「それは演劇を続けるための選択じゃないんですか?夢を捨てきれない
人もいるでしょうし、最初からカフェ公演をする人もいるでしょうし
演劇を続けていく上での野望があって実現のために続けている人もい
ますよね。」
島原「演劇がなくなるって思うのは、一般の人がどう思うかってすごく大事
だと思います。スペドラの応募が減ってきている事もそうですし、自
分たちが関西小劇場を背負うっていう意気込みで公演しないとって思
います。地方の演劇って何とかしないといけないって思って、周りに
同じように思ってもらわないとそれはいらないものになっていくよう
に思います。一人が必要だって言っても周りが必要じゃないってなれ
ば必要なくなりますからね。」
中川「周りが必要じゃないってなったら必要じゃないのは違うと思います。
自分にとって大事なら、同じように大事に思ってる人が居ればなくな
らいと思います。演劇の魅力を分かっている人が居ればなくならない
ですよね。」
島原「私、演劇に対してネガティブなんですよね。音楽や美術でも一緒だと
思います。自分がこれやって思ったものが大事だと思います。」
中川「それと一緒だと思いますよ。自分の居場所って。」
島原「最近、私には演劇しかないって思いますし、劇団の為にやってますし
自分には必要なんですけど、ただ、世間から見たら必要かと言われる
と。」
中川「新しい表現も生まれてますよね。純粋に面白いから何を学び取るかは
お客さんの資質だと思いますし、お客さんの事も信頼するべきだと思
います。演劇はなくならないと思いますし、社会的に見ても演劇はな
くならないと思います。あえて対立する意見を出していただいたので
すが、島原さんはどう思われましたか?」
島原「卒業論文で演劇の大切さを書いたんですけど『コミュニケーション能
力の獲得における演劇の可能性について』です。でもその内容は認め
られなくて、主観だけだって。それは世間の目なんだろうなって思い
ました。私自身、演劇の魅力は理解しているんですけど、社会からそ
れは主観だろってなるので、自分が説明する事も大事ですし、演劇が
必要じゃないだろって言われるとそうですねってなってしまうレベル
にしかなってないと思いますし、世間の事をみると、自分にとっては
必要なんですけどね。自分が小劇場担うぞって意気込みがないとダメ
だなって思いましたので、この勢いでスペドラに臨みたいと思いま
す。」
中川「この熱量でお互いに燃え上がらせて、それがお客さんに燃え移るかど
うかは劇場で、お楽しみください。」
島原「ありがとうございました。」
中川「ありがとうございました。」
2016・04・14